「自動車保険に入っているから親戚・友人に車を貸しても大丈夫」?車の貸し借りのリスクと対策を解説!

「自動車保険に入っているから親戚・友人に車を貸しても大丈夫」?車の貸し借りのリスクと対策を解説!

車を持っていると、友達や親戚から「1日だけ車を貸してくれないかな?」と言われたり、複数人で遊びに行くときに「交代で運転するから、あなたの車に乗せていってくれない?」と頼まれたりすることもありますよね。

そのとき、皆さんは「1日ぐらいならいいか」と思って、気軽に貸していませんか?

貸す側の気持ちとしては「車を持っているのは私だけだし、それで友達が助かるなら……」といった好意だったとしても、実は様々なリスクの付きまとう、危険度の高い行為だということをご存じでしょうか(※1台の車を誰かと交代で運転することも、「自分の車を他人が運転する」という点においては、貸し借りと変わりません)。

本やCDなどの単なる物の貸し借りと異なり、車の貸し借りには事故や賠償などの色々なリスクが付きまといます。

今回の記事では「車の貸し借りに付きまとうリスク」と「リスクの回避方法」について解説します。オススメの保険の紹介などもしていきますので、是非最後までご覧ください。

どうして保険を確認せず、他の人に車を貸すと危ないのか

保険を確認せずに友人や親戚に車を貸した場合の主なリスクとしては、下記が挙げられます。

リスク①:車を貸した相手が事故を起こしても、保険で補償されない可能性があるから

リスク②:貸した相手が事故を起こしたとき、事故の支払いが車の持ち主に請求される場合があるから

リスク③:事故に対して保険を使った場合、保険料が上がってしまう場合があるから

リスク④:トラブルが起きたとき、人間関係も悪くなることが多いから

では、リスクの詳細を一つずつ説明していきますね。

リスク①:車を貸した相手が事故を起こしても、保険で補償されない可能性があるから

自分の入っている自動車保険の対象者に貸した相手が含まれない場合、貸した相手が事故を起こしても保険金が下りることはありません。当然といえば当然ですが、「案外気が付かなかった……」という方も少なくないのではないでしょうか。

大抵の自動車保険は、「どの車」を「誰が運転するか」で補償する対象を決めています。

例を出すと、「『Aさんの自家用車』を『Aさんとその配偶者』が運転していて事故が起きたとき、保険金を払う」といった感じですね。

この契約内容の場合、事故が起きて保険金が下りるのは「『Aさんの自家用車』を『Aさんとその配偶者』が運転しているとき」のみですので、Aさんの友人がAさんの自家用車を運転して事故を起こしても、保険金は下りません。

最近は保険会社も「本人限定プラン」「本人・配偶者限定プラン」といった名前で、補償する対象を絞ることで保険料を安くするプランを打ち出していますが、そのような形で保険に加入している場合、友人や親戚などの他人は保険の対象外となっていることが多いので注意しましょう。

運転者を限定したプランが安いのは、運転者が限定されるほど保険会社の支払いリスクが低くなるからです。誰が運転しても補償しなくてはならないのと、特定の人が運転した時だけしか補償しなくて良いのでは、リスクが違ってきますよね。運転者を限定したプランに割引がついているのは、保険会社側の「支払いリスクの高いお客さんには高い保険料を払ってほしい。逆にリスクが少ないお客さんは、保険料を安くしてもよい」という事情(※)も含まれています。

もちろん保険料を払うのは自分なので、不必要に対象者を広くする必要はありませんが(「独身でマイカー通勤をしているので、他の人が車を運転することはない」といった人にとっては「誰が運転しても」といった安心がつくより、保険金が安くなる方がお得に感じることもあるかと思います)、他の人に車を貸すときは、自分の自動車保険の対象者に貸す相手が含まれているかどうか、確認するのが大事です。

※参考資料 日本損害保険協会「「保険料」は、統計データを基に決められる。」のページ

https://www.sonpo.or.jp/wakaru/seminar/step1/chapter5.html

コラム:他の人が運転しても保険金が下りる保険はある?

先程「保険の対象者ではない人が運転しても保険金が下りることはない」と説明しましたが、自賠責保険は貸した相手が事故を起こしても補償を受けることができます。

これは自賠責保険が「特定の車両(たとえば、「Aさんの自家用車」など)を運転して事故が起きたときに補償する」ものだからです。自賠責保険は保険の適用条件に運転者を定めていないので、他の人が運転しても補償の対象になります。

ですが、自賠責保険は補償の対象が「事故に遭った人の身体に対する請求」のみになりますので、物損事故(ガードレールや電柱にぶつけた)は保険金が下りません。

また、自賠責保険の限度額を超えた分の請求に関しては補償がきかないので、万が一事故の請求額が自賠責保険の限度額を超えた場合、残りの分は実費負担となります。

自賠責保険だけでは十分な備えとは言い難い部分がありますので、やはり他の人に車を貸す際には、自分の自動車保険の対象者がどのようになっているか確認することは必須と言えるでしょう。

リスク②:貸した相手が事故を起こしたとき、事故の支払いが車の持ち主に請求される場合があるから

「車を借りた人が運転して起こした事故だから、その事故の請求の支払いは借りた人がする」一見、普通の理屈のように思えます。しかし、実際に事故が起きて請求が発生し、運転していた人が支払えない(支払わない)場合車の持ち主に請求が差し向けられるのを皆さんご存じでしょうか。

「自分は運転していないのに、支払わなくてはいけないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。ですが、事故を起こした運転者が請求に応じない場合は、車の持ち主に請求が行く可能性があります。

その根拠となるのが、自動車損害賠償保障法第3条です。自動車損害賠償保障法第3条には「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。」とありますが、自動車を貸した人も、この法律に定める「自己のために自動車を運行の用に供する者」に当たるため、「これによつて生じた損害を賠償する責に任」ぜられてしまいます。

そのため、「車を借りた人が起こした事故だから」と、車の持ち主が責任を逃れることはできません。車を貸す側の人も、事故が起きたとき賠償する責任を負うことになっています。

もちろん請求を受ける順番としては運転していた人が最初に受け、その次に車の持ち主が受けるという形になりますが、いずれにせよ事故の際には車の持ち主も責任を問われる可能性が十分あります。

その為、他の人に車を貸すときは、「その人が起こした事故の責任を全て引き受けることになっても良いか?」と自分に問いかけてみるのが大事です。

他の人が運転していても、車の持ち主の自分が責任を問われることがあると知っておくと、車は安易に貸してよいものではないということをより実感を持って理解できるかもしれませんね。

リスク③:事故に対して保険を使った場合、保険料が上がってしまう場合があるから

万が一車を貸した相手が事故を起こし、その人が事故の請求に対して支払いができない場合、車の持ち主の保険を使うことになります。しかし、大抵の自動車保険は保険金の支払いを受けると、翌年からの保険料が上がってしまいます。

では、事故を起こして保険金の支払いを受けると、なぜ保険料が上がってしまうのでしょうか。

理由としては、保険会社は基本的に「支払いリスクの高いお客さんには高い保険料を払ってほしい」という考え方で運営されているからです。事故を起こして保険金の支払いを受けると、保険会社から「支払いリスクが高いお客さん」認定をされてしまい、翌年からの料金が上がってしまいます。

事故を起こした場合、いくら保険料が上がってしまうのかは契約されている保険会社によって異なりますので、事前にチェックしておきましょう。

保険会社によってはシミュレーターを用意していることもあるので、用意されていればいくら保険料が上がるのかを簡単にチェックすることもできます。例として貼っているリンクはソニー損保のものですが、無事故だった場合の保険料も合わせて表示してくれますので、より安全運転への意識が高まりますね。

https://www.sonysonpo.co.jp/auto/guide/agde025.html

「他の人が起こした事故なのに自分の保険料が上がる……」と納得のいかない気持ちになるかもしれませんが、保険を使うと保険料が上がってしまうのは事実です。車を他の方に貸すときには、保険がきくかどうかだけでなく、その人が安全運転をする人かどうかも考えてから貸し出したいですね。

リスク④:トラブルが起きたとき、人間関係も悪くなることが多いから

人によっては「友達だから……」「身内だから少しぐらい……」と、その場の人間関係を優先して車を貸し出してしまった経験のある方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、事故が起きた場合、どれだけ仲が良かった友人や親族でも、トラブルになるのはほぼほぼ避けられないかと思います。

まず、事故の請求を受けたら、借りた人と持ち主のどちらが支払うのか。保険を使った場合、割増になった保険料は誰が支払うのか。車が故障していたら、その修理代は借りた人か持ち主が払うのか……トラブルの種を数えていくときりがありませんが、事故が起きてしまった場合、事故が起きる以前の関係を続けていくのは難しいのではないでしょうか。

事故を起こした友人が請求された金額を支払いきれず、自分の保険を使ったとしたら「友人が起こした事故なのに保険料が上がった……」という気持ちが残るでしょうし、友人に上がった保険料を払ってもらったとしても「友人にお金を払ってもらっても良かったのだろうか?」といった迷いが生じることもあると思います。

お互いに話し合って円満に解決できれば良いですが、事故が原因で関係性がこじれて仲違いをしてしまう……といった可能性もなくはありません。その場の人間関係だけでなく後々のことも考えて、車を貸し借りするときには事前にしっかり話し合うのが大切です。

友人や親戚に車を貸してと言われたら、どうしたらいい?

それでも、「人間関係的に断るのが難しい」「友人数人と出かけるが車を持っているのは自分だけ」「かけている自動車保険は自分しか対象者になっていないが、断り切れなかった」ということもありますよね。

そういった場合の対策もいくつかご紹介します。

対策①:車を貸す相手に、1日ドライバー保険に入ってもらう

保険会社が提供している1日限りの掛け捨ての保険に入ってもらう方法ですね。単純ですが、最も安心な方法と言えるでしょう。

保険の有効期間は1日単位ととても短いですが、大抵どの保険会社も基本的に「対人・対物無制限(人身事故・物損事故の賠償額に上限がない)」の補償をつけてくれているので、万が一の備えとしての信頼感は普通の自動車保険と変わりません。

価格は保険会社とプランによりますが、1日800円~2500円の間に収まることが多いようです。非常にリーズナブルですので、車を貸す相手が保険の対象者に含まれない場合は加入してもらうよう促してみましょう。

また、対人・対物の補償額が無制限であることをサイトに明記している保険会社をピックアップしてみました。「どの保険がいいのかな?」と思われた際には、一度見てみてください。

・三井住友海上

https://www.ms-ins.com/personal/car/oneday/

・あいおいニッセイ同和

https://www.aioinissaydowa.co.jp/personal/product/other/oneday/plan.html

・ドコモ1日保険

https://hoken.smt.docomo.ne.jp/onetime-insurance/car/

対策②:車を貸す相手が自動車を持っていて、保険に入っているなら「他車運転特約(他の人の車を運転しても補償される特約)」がついているか確認してもらう

車を持っている相手に車を貸すことはあまりないかもしれませんが、相手が車を持っていて自動車保険をかけている場合、「他車運転特約」をつけている可能性があります。

「他車運転特約」とは、他人の車を運転して事故を起こしても、自分の保険を使用することができるという特約です。保険会社によってはどのプランを選んでもついてくることがあり、「知らない間に加入していた」という方も少なくありません。

また、貸す相手が車を持っていなくても、その方の同居の親族の方が車を持っており(親御さん等)、その方が保険の対象になっていることもあり得ます。

相手や相手方のご家族が車を持っているのであれば、一度保険を確認してもらい、そのような特約がついていないか、保険の対象者になっているか確認してもらうのも一つの方法ですね。

対策③:1日ドライバー保険への加入も断られ、他の自動車保険もかけていないようであれば、車を貸すこと自体をきっぱりと断る

残念ながら、世の中にはこちらがいくらリスクを説明しても「大丈夫だから」「1日ぐらい」と保険に入ってくれない方もいます。

そういった相手の場合は、いくら仲が良くてもきっぱりと断るのが大事でしょう。リスクを理解できない方に車を貸し出したら、事故が起こったときにトラブルになるのは予想に難くありません。場合によっては「借りただけだから支払いはしない、あなたの車だからあなたの保険で支払って」と、図々しい要求をしてくる可能性もあります。

ですが、相手が友達であったり、付き合いのある相手であったりであまり角を立てたくないときもありますよね。そんなときに使えるフレーズをいくつか考えてみましたので、よろしければお使いください。

・「ごめんなさい。あいにくその日は家族で出かけることになっているので、車は貸せません」
予定があることにして断れば、角も立ちにくいですね。その日に実際に出かけているか見張ってくるような相手でなければ、これで断れるのではないかと思います。

・「最近は安いレンタカーもあるみたいだよ。1日保険に入って私の車をガソリン満タンで返してお礼のお金を払うより、そっちの方が安くつくかも」

さりげなく、レンタカーを借りる方向に誘導するのもアリではないでしょうか。「他の人の車を借りたい」と考える人は「レンタカーを借りるより安く済ませたい」と考えていることが多いので、こちらに支払うお金とレンタカー代があまり変わらないことを示せば、案外「そっちの方が安いわね」と、借りるのを諦めてくれるかもしれません。

まとめ

今回の記事では「車の貸し借りに付きまとうリスク」と「リスクの回避方法」について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

いずれにせよ、「事故を起こしたときに、保険が下りない人には運転させない」ということを念頭に入れておいていただけると、車の貸し借りにも慎重になれるのではないかと思います。

車の貸し借りにおける危険性や、諸々のリスクが格安の保険でカバーできることなど、車の貸し借りについて気を付けると良い点についてお伝えできていましたら幸いです。